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大夫伍奢はつづける。
「秦は、凶計を企んでいるので、殿はこのたびの集まりに下手にご参席なされては、
取り返しのつかない侮辱を受けられるかもしれません。」
楚王はその話を聞いて、
「いっそのこと、集まりに参列しなければよいではないか」
大夫伍奢は言う。
「天下に号令した我が国が参列しませんと、秦は、怖じ気をふるって来ないのだとせせら
笑うでしょうから、かならず参列なさらなければなりません。また、万一に備えて文武
を兼備した多くの人士を伴われて、威風堂々とご参列なさらなければなりません。」
楚王は伍奢のいう通りだと思い、群臣を一堂に集め、この間の事情をつぶさに説明してから
「わしと一緒に秦に行き、万一の場合、わしを最後まで護衛してくれる者はおらぬか」
と訊いた。
座中には豪傑風の百戦の老将が数多くひかえているが、すぐに応え出る勇士はだれもいなかった。
すると、
「小臣が命をかけて、大王を秦にお連れ致しましょう。」
手をさっと上げて見せた。見てみれば、歳はまだ三十そこそこだが背丈が高くたくましい体格をしており、誰が見ても頼もしく思える人物であった。
なんと、大夫伍奢の息子伍子胥であった。
楚王は痛く喜んで、
「おお、そちがわしについていってくれれば、わしは何を恐れようぞ」
楚王は伍子胥にたずねた。
「此度の朝貢の品は何が良いか」
伍子胥はこたえた。
「秦王に会いに行かれますのに、朝貢の品をお持ちになるなどとは、もってのほかでございます。そんな集まり
に殿が親しくご臨席なさったということだけでも、彼らがまたとない光栄と思うようにさせなければなりませ
ん」
父親の大夫伍奢は、息子のいうことを聞いて会心の笑みをもらした。《孫氏の兵法 鄭飛石 より》
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